コエボンラジオをお聴きの皆さんこんばんは。5月29日土曜日の女優オノユリの映画の話をしましょうよのお時間です。2021年5月の終わりも近づいてまいりました。先日 古澤健監督作品、映画「いづれあなたが知る話」のクラウドファンディング特典用のポートレート撮影があり、参加させていただきました。女優であり、人と背景をぐっと魅力的に物語性をもって写し撮る根矢涼香(ねやりょうか)さんが撮影してくださいました。都庁のすぐ下に広がるエリアを色々と回ったのですが、紫陽花ストリートがあって、既に咲き始めている色々な種類の紫陽花が可憐で健気でかわいらしいのに、根矢さんが写し撮るととても艶っぽくてうっとりするような風景が描かれていました。その日は、スーパームーンの皆既月食の日で、わたしの撮影は日が陰り暗くなってきた頃だったので、お月さまの力も加わって更に魅力的な写真になっているのかもしれませんね。残念ながら、わたしは観測できなかったのですが、スーパームーンのパワーは、観測できなくても浴びているそうなので、間違いないです。(笑)では、映画「いづれあなたが知る話」については今週も最後にお話することにして、本日も映画の話をしましょうか。

Ma Rainey’s Black Bottom

2020年製作/94分/アメリカ
監督:George C. Wolfe ジョージ・C・ウルフ
原題:Ma Rainey’s Black Bottom
Viola Davis
Viola Davis ビオラ・デイビス: Ma Rainey
Chadwick Boseman
Chadwick Boseman チャドウィック・ボーズマン: Levee
Glynn Turman
Glynn Turman: Toledo
Colman Domingo
Colman Domingo: Cutler
Michael Potts
Michael Potts: Slow Drag
Jeremy Shamos
Jeremy Shamos: Irvin
Jonny Coyne
Jonny Coyne: Sturdyvant
Taylour Paige
Taylour Paige: Dussie Mae
Dusan Brown
Dusan Brown: Sylvester

STORY

1927年。情熱的で歯に衣着せぬブルース歌手マ・レイニーとバンドメンバーたちのおもいが熱くぶつかり、シカゴの録音スタジオは緊張した雰囲気に包まれる。

NETFLIX(マ・レイニーのブラックボトム)

FILMANIA 映画の話をしましょうよ

本日お話する、ジョージ・C・ウルフ監督の “Ma Rainey’s Black Bottom” 、引き込まれてあっという間に94分経っていた作品でした。まず、メインキャストお二人が素晴らしくて!主演のマ・レイニーを演じるのはデンゼル・ワシントン監督作品「フェンス」のオスカー女優ビオラ・デイビス。わたくしオノユリ今ちょうどドラマ「殺人を無罪にする方法」と言うドラマを夢中で鑑賞しておりまして、そのドラマの中でめちゃくちゃかっこいい弁護士先生の役をされているのがこちらのビオラ・デイビスさんなんです。最初「マ・レイニーのブラックボトム」で気づかなかったのですが、あんなにかっこいい人がそんなにいてもおかしいだろう!と思ってわくわくエンドロールを確認したものです。さらに、もう一方の若くて野心あふれる黒人トランペット奏者が、これまたわたしったら映画に飲み込まれたように全然その方が誰だかわからず。エンドロールをみて愕然としました。「ブラックパンサー」のチャドウィック・ボーズマンさんなんです。声が言葉になりませんでした。(そうだ、そうだ、そうだ!チャドウィック・ボーズマンさんだ・・・。)ただ、わたしの知っているチャドウィック・ボーズマンさんとは違いました。ギラギラとした目が全てを手に入れてやると怖いくらいにひかっていて、何なんだろう、この人。同じ場にいたらちょっと危機感あるかも・・・。と感じるほどの何かを狙っている目です。後から知ったのですが、このジョージ・C・ウルフ監督の “Ma Rainey’s Black Bottom” がチャドウィック・ボーズマンさんの遺作となり、マ・レイニー役のビオラさんがインタビューで「どれだけ疲れていても、カメラが回った瞬間そんな事は1ミリも感じさせなかった」と仰っていて、大腸がんの闘病中の痛みを抱えながらも彼の出演作で周りの人を幸せにしたいと言う願いを強く感じるとともに、この世から失われてしまった美しい才能のことをおもい、いたたまれない気持ちになりました。

今作の物語は、ある1日を通して描かれています。大きなテーマは人種差別。マ・レイニーは、「ブルースの母」と呼ばれた実在の黒人シンガーです。1927年の夏、シカゴのレコーディングスタジオ。1時間遅刻した挙げ句無茶な要求を連発し、白人のマネージャーとプロデューサーを傍若無人な態度で振り回します。そして、なぜマ・レイニーがそのような態度を取るのか?実はチャドウィック・ボーズマン演じるレヴィーと白人のマネージャーやプロデューサー以外は全員よくわかっているのです。マ・レイニーがどれだけ稼ごうと、「白人から敬意を払われることは絶対にない」からです。一方若きトランペット奏者レヴィーは作曲の才能があり、自分のバンドでレコードを出してスターになることを夢見ています。彼は、白人プロデューサーを利用しようと考えています。幼少期に凄惨(せいさん)な差別を経験した彼は、お腹の中でどう思おうと、プロデューサーには笑って媚びを売るのです。

若く才能あふれるトランペット奏者のレヴィーは、マ・レイニーのように上り詰めていくのではないかと思われるますし、実際 マ・レイニー の若い頃と同じなのではないかと想像をさせますが、この2人には絶対的な違いが存在します。マ・レイニーが自分の音楽を追求するのに対し、レヴィーは「今、大衆にうける音楽」を作り出すのです。そこでこの映画のタイトル”Ma Rainey’s Black Bottom” を思い出して欲しいのですが、マ・レイニーは作中で「ブルース生んだのはわたしじゃない。ブルースはいつだってそこにあった。(でも”ブルースの母”と呼ばれてもいい)」と言います。では、ブルースとはなんなのでしょう?

ジョージ・C・ウルフ監督の “Ma Rainey’s Black Bottom”を深堀りするために、若干道をずれますが、イギリス人のポール・オリヴァーというブルースの歴史と発展研究の第一人者がいます。

「ブルースとは、心の状態であるとともに、その状態に声で表現を与える音楽である。ブルースは捨てられたもののすすり泣きであり、自立の叫びであり、はりきり屋の情熱であり、欲求不満に悩むものの怒りであり、運命論者の哄笑(こうしょう)である」

ポール・オリバー著「ブルースの歴史」より

何を言っているかといいますと

<ブルースを生んだ時代背景>

こうして初めて、黒人たちは自分たちの心の奥に潜む欲望や悲しみを、自分たち自身の言葉で表現することができるようになったのですが、それにはもうひとつ重要な時代背景の影響がありました。それは奴隷解放が行われ、黒人たちに自由が与えられるようになった19世紀半ば以降、その反動として南部では黒人へのリンチが激増、さらには州ごとに黒人を差別する州法が次々に成立。レストランや劇場だけでなく水飲み場までもが分離されるようになり、奴隷制以前よりも厳しい差別の状況が生み出されていたのです。その影響ががそれまで神への歌しかなかった黒人たちに新たな悲しみのはけ口を必要とさせたのかもしれません。「ブルース」が「黒人たちの悲しみを表現したもの」と言われるのも当然です。


ブルースの誕生– 自由の獲得と新たな苦難が生んだ心の叫び –

つまり、マ・レイニー の追求しているものは、自分たちの黒人の心の状態であり、捨てられたもののすすり泣きであり、自立の叫びであり、はりきり屋の情熱であり、欲求不満に悩むものの怒りであり、運命論者をせせら笑うことなのです。そして、それを見事に体現しているのが女優ビオラ・デイビス。今、大衆に受けるものを作るレヴィーとブルースを理解し追求するマ・レイニーの差が生み出されるものをご自身で鑑賞してみてください。レヴィーが開こう開こうとする扉が開いた時、そこに見えるものは、彼の人生の縮図のような景色です。

さて、ジョージ・C・ウルフ監督の “Ma Rainey’s Black Bottom” は、舞台を鑑賞しているような感覚を受けます。三谷幸喜さんの作品を鑑賞しているような。それもそのはずで、劇作家オーガスト・ウィルソンの戯曲を映画化したものなのです。オーガスト・ウィルソンは1990年代の米国で最も多く上演され、2度のピュリッツァー賞をはじめ数々の演劇賞を受賞するなど、現代米国演劇を大きく変革した偉大な劇作家であり、現代米国演劇を変革した、知られざる黒人劇作家なのです。そしてジョージ・C・ウルフ監督の “Ma Rainey’s Black Bottom”のプロデューサーは、デンゼル・ワシントンが努めています。デンゼル・ワシントンは、2010年にブロードウェイの「Fences」でトニー賞主演男優賞を受賞し、同じ作品を自ら製作・監督・主演を兼ねて映画化した「Fences」(16)で、アカデミー作品賞・主演男優賞など4部門にノミネートされていますが、この作品の劇作家がオーガスト・ウィルソン。更に、第89回アカデミー賞で作品賞をはじめ4部門でノミネートされた「Fences」、助演女優賞を受賞したのが、ビオラ・デイビス。今回マ・レイニーを演じている彼女なのです。もうひとつ付け加えさせてもらうと、レヴィー役のチャドウィック・ボーズマンが学生時代にイギリスのオックスフォードで演技を学ぶための交換留学を勧められたそうなんです。ところが「お金がなかった」彼のために、留学を勧めた黒人女優のフィリシアが彼女の友人にあたってくれたお陰で、資金を提供してくれる人物が見つかったといいます。それが実は、デンゼル・ワシントンだったのです。学生で無名だったチャドウィック・ボーズマンはその事を知らずに、イギリスから帰国し、学費の受領書をかくにんしたところ“デンゼル・ワシントンさんがお支払い頂きました”と記載されていたそうです。そして、チャドウィック・ボーズマンさんの遺作は、今作ジョージ・C・ウルフ監督の “Ma Rainey’s Black Bottom”、デンゼル・ワシントンさんのプロデュース作品となりました。もしご興味をもっていただけたら、ぜひこの”Ma Rainey’s Black Bottom” 鑑賞後に、『マ・レイニーのブラックボトムが映画になるまで』をご覧になってみてください。事前知識なく作品を見た後に、こちらを鑑賞し、震えました。わたしは。皆さんに伝えたいなぁとおもったことがたくさんあり、伝えきれないので観てもらえれば、とおもいました。

点滅する希望

6月14日と19日に新宿K’s Cinemaさんにて「点滅する希望」と言う作品が公開予定となっております。こちらの作品、現在クラウドファンディング真っ最中の「いずれあなたが知る話」で主演の一人を演じられている大山大さんが監督を務められています。大山さん自身も出演されている作品で、短編作品なのですが実験的な要素が散りばめられ、ある種の期待を寄せてしまう作品となっておりました。わたしはこの作品の中の大山さんの役が面白くて、全然笑えるシーンじゃないと思うのですが、笑ってしまいました。おそらく、外国人が「もののけ姫」を鑑賞してアシタカの矢によって腕が飛んでいったシーンを観て笑う、のと同じ原理でしょうね。コエボンラジオメインMCの中井プロデューサーによると、オノユリの感覚はずれている。そうなので。そう言われるとわたしに映画の話をさせて大丈夫なのかほとほと疑問に思いますが(笑)ただですよ、このわけわからない原理をもとに考えると、大山監督の「点滅する希望」は外国人にウケる可能性がある、ということになります。更に外国人にウケるものは、日本人はとっても好意的に受け止める。法則がありますので、色々含めてご鑑賞いただき、これからの才能の一つをしっかり目撃していただければとおもいます。

いずれあなたが知る話

先週、一般公開に先駆け6月10日までクラウドファンディングにご支援いただいた方に、完成したばかりの「いずれあなたが知る話」の特報を先行公開いたします!と発表があった「いずれあなたが知る話」ですが、なんとご支援者の皆さまのおかげで、6月10日を前に目標金額に達成いたしました!ありがとうございます。ありがとうございます。引き続き、「いずれあなたが知る話」2021年6月10日までクラウドファンディングサイトにて支援を募っております。映画って本当に夢やロマンの塊なのですが、お金がとってもかかります。多くの人の夢が叶いますように。「いずれあなたが知る話」物語は歪んだ愛情と行為がぶつかるノワールサスペンス。古澤健(ふるさわたけし)監督作品。主演大山大さんと小原徳子(こはらのりこ)さん、小原さんは今作で脚本家としてもデビューされています。たくさんの困難を乗り越え、劇場公開のためにクラウドファンディングと言う選択を歩み始めた作品です。ご支援いただければ幸いです。

では、今週もこのへんでお開きといたしましょう。皆さま、5月最後の週末を、素敵にお過ごしいただけますように。また来週、映画の話をしましょうね。オノユリでした。