コエボンラジオをお聴きの皆さんこんばんは。7月17日土曜日の「女優オノユリの映画の話をしましょうよ」のお時間です。暑いですね。東京は梅雨明けした模様です!夏空はなんだかピカピカしていて気持ちがすかーっとします。金曜日に学校帰りかな?のお子さんが大量の荷物を持って歩いているのを見かけました。夏休みが近いんだろうな〜なんて思っていると、今ののんびりした気持ちが、きっとなんとも言えない焦燥感へ変わっていくのかな・・・なんて気持ちになりました。何か行動に移したり、旅に出たりしたいな〜!と言うわけで、本日はきっと皆さんの想像を超えた旅へご案内しようと思います。では、1899年、冬のロシア帝国へ!出発進行!!

シルバー・スケート

2020年製作/137分/ロシア
監督:ミハイル・ロクシン監督
原題:Silver Skates

CAST

マトヴェイ 役
貧しい家庭で育ったアイススケートの配達員
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ヒョードル・フェドートフ
出演作:『Sherlok v Rossii』『V parke Chair』
アリサ 役
高級官僚の娘で政略結婚を強いられる
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ソーニャ・プリス
出演作:『Forgotten Experiment』『Tantsy na peske』
アレックス 役
スリ集団のリーダー
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ユーリー・ボリソフ
出演作:『AK-47 最強の銃 誕生の秘密』『ワールドエンド』
トルベツコイ大尉 役
アリサに求婚する
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キリル・ザイツェフ
出演作:『Dvizhenie vverkh』『魔界探偵ゴーゴリ』シリーズ
ニコライ・ニコラエヴィチ 役
アリサの父親でロシア帝国の大臣
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アレクセイ・グシュコフ
出演作:『Ragin』『修道士は沈黙する』
セヴェリナ 役
アリサの継母
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セヴィリヤ・ヤノシャウスカイテ
出演作:『バビロン・ベルリ』『エミリヤ、自由への闘い』
ジャクソン 役
アリサの家庭教師
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キャシー・ベルトン
出演作:『あなたを抱きしめる日まで』『ダブリン上等!』
https://netofuli.com/news-361/

STORY

凍った川や運河を人々がスケートで往来するサンクトペテルブルクで、盗みを働いて暮らす青年と貴族の娘が出会う。愛し合う2人は運命に引き裂かれてしまうのか。

オフィシャルサイト

FILMANIA 映画の話をしましょうよ

本日はロシア映画を2本立て続けにお話しようと思っておりますが、まず1本目ミハイル・ロクシン監督「シルバー・スケート」。この映画、何週間か前に鑑賞した作品で、久しぶりのロシア映画でした。色々思うことがあって、ご紹介しようと思っていたのですが、こちらの作品1本でまとめ上げられる腕がわたしにはないかもしれない…とちょっと心配になり(笑)他の作品と2本立てでご紹介しようと思ったものの、最近取り上げた作品がかなり単体で重量感のある作品ばかりだったので、バランスが難しいなぁ、と素敵な作品ではあるものの、お話するのはお蔵入りかな…と心残りのあった作品なのです。というのもこれからもう少しお話に踏み込んでまいりますが、とても美しい素敵な作品なのです。

主人公はマトヴェイ君、貧しい家庭で育ったアイススケートの配達員。これがどう見ても1899年版のウーバーイーツの配達人で、オーダーされたピローグ?という、パイのように見える、ピロシキの大きいものを貴族の邸宅に届けています。唯一の家族であるマトヴェイのお父さんは街灯の点灯夫で重度の肺結核を患っています。

マトヴェイは父親から譲り受けた銀色のスケート靴で、金色の円柱で飾られた豪華な菓子店から飛び出すと、馬車につかまり、ネヴァ川を飛び越え、オーダー主の元へと急ぎます。

この瞬間から、冬のサンクトペテルブルクの美しさが観ている人たちの心を一気に掴みます。凍ったネヴァ川の上には、クリスマスのマーケットが立ち、ペテルブルクの橋はモールで飾られ、街中に偉大な歴史的建造物や教会、寺院が並び、その屋根はゆっくりと雪に覆われていきます。ガッチナ宮殿、大理石宮殿、シェレメチェフ宮殿やその内装が映し出されるシーンでは、冬のロシアの色彩に心を奪われ、この美しい物語の中にできるだけ長く留まっていたくなります。

マトヴェイは不運にも職を失ってしまいますが、お金が必要でした。それは肺結核を患い、外国での手術が必要な父親のため。お金を得るために、マトヴェイはアレックス率いるマルクス主義者の秘密結社でスリ集団に近づきます。この秘密結社は政権交代を支持すると同時に、氷上のマーケットで裕福な市民を相手に盗みを働いていました。

マルクス主義のメンバーたちと集団スリをするうち、マトヴェイは若い貴族の娘、この作品のヒロイン、アリサと出会い、夢中になるのでした。しかしマトヴェイは貧しい家庭の青年で、アリサはロシア帝国の大臣の娘、更に政略結婚を強いられている身。この恋は引き裂かれる運命なのでしょうか…?

そして、マルクス主義者の秘密結社はどうなるのでしょう?スリ集団と行動をともにするマトヴェイは?アリサは??

参考サイト Russia Beyond

もともとミハイル・ロクシン監督「シルバー・スケート」はメアリー・メイプス・ドッジ著の小説(『Hans Brinker, or The Silver Skates』)に基づき制作され、『ロミオとジュリエット』から着想を得た作品として知られているそうです。

作品に突出した見どころが3つあります

  • スケート
  • 衣装
  • 実際の歴史的事実や19世紀末の帝政ロシアの生活について知ることができる

1. スケート

トレーニング、追跡、喧嘩、ダンスなど、見どころが氷の上で展開されます!出演者は皆、3ヶ月にわたりスケートのトレーニングを受けたそうです。そして主役のマトヴェイ役を演じるフョードル・フェドートフは、かつてホッケーをしていただけあって、氷上での姿は凄い!3ヶ月であんな超人になれるものかと疑ってしまうほど作中全編に渡り見事なスケート技術が披露されています。

2.衣装

ドラマ中の多くの衣装は1点ものの手作りです! ドラマの美術を担当するガリーナ・ソロドヴニコワは、帝室にニコライ2世の衣装を届けたデザイナーの作品やディオール、アレキサンダー・マックイーン、イヴ・サン・ローランなどの作品にインスプレーションを受けたとヴォーグ・ロシアで語られています。マルクス主義のスリたちは灰色のシンプルなコートとウールのセーターしか着ていませんが、貴族のアリサとその側近たちはレースや花や羽で飾られた豪華なドレスで着飾り、白い毛皮のコートを着て、派手な帽子を被り、伝統的なロシアのココーシニクと言う頭飾りをつけ、金色の帝国の紋章が入った青い軍服を身につけています。もう、この衣装の美しさには目がキラキラしてしまいます。まさしくおとぎ話の中のようです!

3.実際の歴史的事実や19世紀末の帝政ロシアの生活について知ることができる

「シルバー・スケート」はロマンチックな「ロミオとジュリエット」的な物語ではありますが、ロシア革命前の出来事や生活についてはかなり正確に語られています。

・たとえば、スケートは実際、当時もっとも人気のあった娯楽の一つです。当時の貴族たちは、タヴリエーチェスキー公園でスケートをし、一般のペテルブルク市民たちはユスポフ公園でスケートを楽しみ、ユスポフ公園の氷上で、舞踏会や仮面舞踏会、お祭りなどが行われました。この他1960年代から1970年代にかけて、ここではフィギュアスケート教室が開かれ、ロシアの最初のフィギュアスケートのオリンピックチャンピオン、ニコライ・パニン=コロメンキンもここでレッスンを受けたそうです。

・主人公の父親は街灯の点灯夫ですが、実際、非常に困難な仕事で、1人で50個もの街灯の管理をしなければならなかったそう。

・また、アリサが入学を夢見る女子学校も実際に存在したものです。この学校では、作中にも登場するロシアの有名な学者、ドミトリー・メンデレーエフが実際、教鞭を取っていました。

ミハイル・ロクシン監督「シルバー・スケート」はロシア帝国時代の美しさに息を呑み、貧しい者たちの情熱と身分の差の恋愛と実は巧妙に現在のロシアを風刺したロマンチックな作品です。

では次にちょっと駆け足でロシア作品第2段へ突入しまーす。

「刑事グロム VS 粛正の疫病ドクター」

2021年製作/138分/ロシア
監督:オレグ・トロフィム監督
「刑事グロム VS 粛正の疫病ドクター」(原題Mayor Grom: Chumnoy Doktor)

STORY

覆面の殺人鬼の凶行が、街全体を恐怖に陥れる。犯人逮捕のためなら手段を選ばない型破りな刑事と、そのパートナーとなった新人刑事が、凶悪犯に立ち向かう。

NETFLIX オフィシャルサイトより

FILMANIA 映画の話をしましょうよ

ロシア映画2本目!オレグ・トロフィム監督「刑事グロム VS 粛正の疫病ドクター」はロシア帝国の1899年からぐぃーんと2021年へ飛びまして、現代のロシアへ。

主人公は刑事グロム。タイトル通り。「刑事グロム VS 粛正の疫病ドクター」この邦題はついつい口走りたくなってしまう魅力があります。この刑事グロムが、一匹狼で武器は所持せず、型破りな方法で犯人を逮捕します。犯人の検挙率は署でダントツですが、器物破損など毎回トラブルを起こします。なので署長のプロコペンコから、いつもクビ宣言をくらいつつ、すれすれで生き延びています。

グロムが以前逮捕したキリル・グレチキンと言う、金持ちの息子で飲酒運転によって少女を轢き殺した腹立たしい男が無罪となる。金の力で関係者を買収したのだ。そのキリル・グレチキンが自宅で殺害される。グロムが駆けつけた時、そこには不気味なマスクをつけた黒いスーツの男が立っていた。犯人はネットで動画をアップし、自分のことを「疫病ドクター」と名乗り、これから悪党たちを殺し、街を粛正すると宣言した。宣言通り、疾病ドクターは次々と犯行を繰り返し、その犯罪はどんどんと過激さを増し、巻き込む被害者も増えていった。心に絶対的な正義を抱く刑事グロムは、一人疫病ドクターを追う!

オレグ・トロフィム監督「刑事グロム VS 粛正の疫病ドクター」は色々な要素がぎっしり詰まっている、ロシア発の新しいヒーロー映画です。熱血刑事グロムに対する疫病ドクターは、被っているマスクがペストが流行した時代にお医者様が被っていたマスクを被っています。確かに、初めてあの鳥類のようなマスクを見た時は不気味さに驚いたものです。刑事グロムの声がバットマンの声によく似ているのですが、バッドマンの行動を模倣するのはむしろ疫病ドクターなので、若干ややこしいですが、ややこしいのはそれくらい。物語はアクションたっぷりで、無骨な外見な主人公の割に作中に愛が溢れていて観やすいです。最近のMARVELやヒーローものが、時々映像がすごすぎて置いてけぼりを感じたり、若干複雑すぎて面白いけど難しかったりと感じる方にちょっと試していただきたいです。ロシアのヒーロー映画オレグ・トロフィム監督「刑事グロム VS 粛正の疫病ドクター」。どうやらシリーズ物になりそうなエンディング…今のうちにチェックしてみて下さい。

本日はボリュームたっぷりなロシア映画2本のお話をお送りしました。ミハイル・ロクシン監督「シルバー・スケート」とオレグ・トロフィム監督「刑事グロム VS 粛正の疫病ドクター」。どちらもロシアの街並みが美しくロマンチックな映像作品となっております。一方はおとぎ話でもう一方はヒーロー物。お楽しみいただけたら幸いです。

ではまた来週、映画の話をしましょうね。どんな映画に出会えるか、とっても楽しみです。皆さん素敵な日曜日をお過ごしくださいね。オノユリでした。