コエボンラジオをお聴きのみなさん、こんばんは。8月21日(土)女優オノユリの映画の話をしましょうよ、のお時間です。最近、フランスのドラマにはまっていて、意味も全然わからないのにフランス語の響きが頭の中でぐるぐるしています。ちょっと学んだのは、フランスでは愛する人に朝クロワッサンを渡すようだ…と言うことです。フランスパンはどうなんでしょうね?食べることが好きすぎて、ドラマを見てても食べることしか学んでいない…はぁ・・・。食欲の秋が来るのが、ちょっと早すぎています。

でも、オリンピックが終わって、大河ドラマが再開して、一つ学んだことを思い出しましたよ。渋沢栄一は「日本の資本主義の父」である。ふふ。では、本日も映画のお話、はじめましょうか。

Swing Kids

2018年製作/133分/PG12/韓国
原題:Swing Kids
監督:カン・ヒョンチョル監督
配給:クロックワークス

本日の映画 カン・ヒョンチョル監督の「Swing Kids」は、あの NETFLIX の映画のあらすじからでも心が惹かれるものがありました。ぜひ、お話したい!と思った作品です。

STORY

1951年。朝鮮戦争当時、最大規模の巨済(コジェ)捕虜収容所。新しく赴任した所長は収容所の対外的なイメージメイキングのために、戦争捕虜たちによるダンスチーム結成プロジェクトを計画する。収容所で一番のトラブルメーカー ロ・ギス、4か国語も話せる無認可の通訳士 ヤン・パンネ、生き別れた妻を捜すために有名になることを望み、愛に生きる男 カン・ビョンサム、見た目からは想像できないダンスの実力を持った栄養失調の踊り手 シャオパン、そして彼らのリーダーであり元ブロードウェイのタップダンサー ジャクソンまで、紆余曲折の末、一堂に会した彼らの名前はスウィング・キッズ!それぞれ異なる事情を抱えてダンスを踊ることになり、デビュー公演が目前に迫っていた。国籍、言葉、イデオロギー、ダンスの実力、全てがちぐはぐな寄せ集めダンスチームは前途多難でしかないが…。

「Swing Kids」オフィシャルサイト

Introduction

主演はアジア各国で絶大な人気を誇るK-POPグループ<EXO(エクソ)>でメインボーカルを務め、『神と共に』シリーズをはじめ演技派俳優としても大活躍を遂げるD.O.(ド・ギョンス)。その身体能力を生かし、タップダンスから北朝鮮の方言まで、約5ヶ月間に及ぶ猛特訓をこなし、ダンスに魅了された朝鮮人民軍ロ・ギス役を見事熱演。ここに世界最高峰のタップダンサーであり俳優のジャレッド・グライムスの出演が実現し、捕虜で構成されたダンス集団のリーダーとなる米軍のジャクソン役を演じる。韓国で社会現象を巻き起こす大ヒットを記録した『サニー 永遠の仲間たち』のカン・ヒョンチョル監督による、タップダンスと音楽を絶妙に融合させた感覚的な演出、才能とエネルギー溢れる若手俳優たちのシナジー、更にはジャズの名曲にのせた爆発的なパフォーマンスで本国では公開わずか9日で観客動員100万人を記録。“朝鮮戦争”という最も悲しい歴史と、“ダンス”という最も胸がときめく題材の異質な組み合わせにより、社会思想の対立、戦争による傷、人種差別などのすべてをダンスを通じて乗り越え、1つになっていく人々のストーリーを感動的に描く話題作が遂に上陸する。

オフィシャルサイト

FILMANIA 映画の話をしましょうよ

本日の作品はカン・ヒョンチョル監督の”Swing Kids” こちらの作品は、鑑賞すると話をしたくなっちゃう作品かなぁ。わたくしオノユリはいつも映画についてお話しているので、参考にはならないかもしれませんが、お話したくなっちゃうと思います。

舞台は朝鮮戦争時代、国連軍の管理下にあった「巨済(コジェ)捕虜収容所」。アメリカ人の所長は収容所のイメージアップのため、黒人の下士官(かしかん)ジャクソンに命じ、捕虜のタップダンスチームをつくらせます。集まったのは、生き別れた妻を捜す民間人捕虜、最近この方良く見かけます!韓国の名バイプレイヤー、オ・ジョンセ演じる、カン・ビョンサム。そして栄養失調の中国人捕虜シャオパンを演じるのは、ぷくぷくとしたキム・ミノ。満州で暮らしたことがあり4カ国語を話す女性ヤン・パンネを演じるのは、カン・ヒョンチョル監督が見出した新しい原石と呼び声が高い、パク・ヘス。そして朝鮮人民軍捕虜ロ・ギスを演じるのはD.O.(ド・ギョンス)。

『スウィング・キッズ』のカン・ヒョンチョル監督が語る、朝鮮戦争+タップダンスで描こうとした悲劇と希望。-Pen with New Attitude

この作品は、北朝鮮の朝鮮人民軍15万人と中国人民義勇軍(ぎゆうぐん:戦争の際に、人民が自発的に編制する戦闘部隊)2万人のおよそ17万人が収容された巨済(コジェ)島の捕虜収容所で、共産主義か、資本主義かで捕虜が分かれ、暴動や殺戮もあったという歴史を背景にしているんです。

こうした背景はあるのですが、作品自体はコメディ色が強い部分もあり、とても楽しく鑑賞できると思います。最初は、このコメディ色にちょっとイメージと違うな…と姿勢を崩してラフな感じで見始めたのですが、どんどん引き込まれてしまって最後は正座で前のめりですよね。

まず、主人公のロ・ギスを演じるD.O.(ド・ギョンス)氏が、まぁ魅力的なんです。わたくしオノユリ、勉強足らずでK-POPグループ<EXO(エクソ)>というアイドルグループを知らなくて、ド・ギョンス氏がアイドルって思いもよらなかったんです。彼の外見が、水泳の北島康介選手によく似ていらっしゃって、特に目が、金メダルをとった時の鋭い眼光によく似てるんですよ。で、坊主頭でぐりぐりした頭にギラギラした目で、思いっきりぶっ飛んでダンスを踊ってくれるんですね。最初は生意気そうな表情をしているから、誰かに似てるな・・・くらいしか思わなかったのが、段々着ているぼろぼろの衣装で隠されていたスタイルの良さ、顔の小ささに気付かされて、役の個性と合致した瞬間にもう…なんだろ?外見の「かっこいい」を遥か超えたかっこいい…そして魅力的、なんです。あぁ、なんていうか、ずば抜けた才能とはこういう事かもしれないですね。

さらに、びっくりしたキャスティングが黒人の下士官(かしかん)、ジャクソンを演じるジャレッド・グライムス氏ですよ!オバマ元大統領のための公演でメインダンサーとして活躍した他、マライア・キャリーなど世界的アーティストと共演してきたブロードウェイ最高のダンサーであり俳優のジャレッド・グライムスなんです!カン・ヒョンチョル監督曰く「ジャレッド・グライムスのタップダンスは、人間ができるレベルのものだろうかと思うほど素晴らしかった。」もう、まさしく、圧倒的なパフォーマンスなんです。わたしは、この方のお芝居も好きです。思慮深くて哀愁のある表情に、ついついフカヨミし過ぎそうになっちゃいます。

タップダンスもキャスティングも素晴らしくて、楽しくてついつい忘れそうになってしまうのですが、この映画の背景で描かれている「朝鮮戦争」を心にとめて鑑賞した方がこの作品をより一層もっと深いところで味わえます。(戦争中だと理解していると、通り過ぎそうになる一言の重みや、一瞬の「きゅん」とした幸せが、「死」と言う恐怖に勝るような思い出になりうるのです。)

「朝鮮戦争」は井筒監督の「無頼」のおかげでわたくしオノユリも少し学びまして、日本人にとっても、関わりの深い歴史であることを存じております。朝鮮戦争は1950年に大韓民国(韓国)と朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の間で生じた、朝鮮半島の主権を巡る国際紛争です。

一方は北朝鮮およびそれを支援して義勇軍を派遣した中華人民共和国、他方は韓国およびそれを支援して国連軍を編成したアメリカ中心の西側16か国。ソ連は北朝鮮・中国側に武器弾薬その他の支援物資を提供したほか、軍事顧問、パイロット、医療部隊などを派遣しています。

カン・ヒョンチョル監督

「巨済(コジェ)捕虜収容所は、朝鮮戦争を圧縮したようなところなんです。朝鮮戦争は大国の戦争からスタートして、最後は巨済島の理念戦争で終わった、とよく言われています。」

だからこそ巨済捕虜収容所を題材として選んだとあるインタビューで答えています。そして、

「共産主義か、そうじゃないのかという、それぞれが信じる理念に対して狂信徒(きょうしんしゃ)のようになり、捕虜同士の殺戮戦(さつりくせん)が起こりました。巨済(コジェ)島は釜山の南西にある島ですが、北朝鮮や中国の捕虜がいて、そこに西洋人の管理者がいる、米軍には黒人もいる。いろいろな出身の人がいて憎み合っていたんです。混沌とした特異な場所だったと思います。そんな収容所でも、ダンスによってイデオロギーを超えられる、友だちができ、幸せを感じられるのではないかということを見せたいと考えました。」と語るとおり、映画からのメッセージは楽しく弾けながらも、とても強いです。

『スウィング・キッズ』のカン・ヒョンチョル監督が語る、朝鮮戦争+タップダンスで描こうとした悲劇と希望。-Pen with New Attitude

この映画の中で描かれているイデオロギーは、共産主義・社会主義・資本主義をさしていて、巨済(コジェ)捕虜収容所内ではそれぞれの囚人の背景にイデオロギーが存在し、そのイデオロギー、要するに信じる理念により分りやすく朝鮮戦争を圧縮したような混沌とした土地となったわけです。

主義や理念なんて言っていますが、監督がお話しているように、ダンスによって超えてやる!と行った物語ですので、ぜひぜひ挑戦してみて下さい。何も知らずに鑑賞始めるより、断然この背景を知っている方が映画をより深く楽しめると思います。

最後に、オフィシャルサイトから監督のお言葉をご紹介しますね。

映画『スウィング・キッズ』は、最も苦しい時代に最も不釣り合いな人たちが出会い”ダンス”という1つのキーワードで幸せを掴むために必死に生きた寄せ集めダンスチームの物語です。

韓国の悲劇の歴史である朝鮮戦争を背景に皮肉なことに、最も胸がときめく行為である”ダンス”というモチーフをとおして戦争とイデオロギーについて語りたいと思いました。

どこか頼りないけれどもダンスへの情熱だけは最高の寄せ集めダンスチーム、一緒に踊りたくなり、思いきり応援したくなるスウィング・キッズのステージにご期待下さい。

ー監督 カン・ヒョンチョル

オフィシャルサイト

ではまた来週、映画の話をしましょうね。素敵な週末をお過ごしいただけますように。

オノユリでした。