コエボンラジオをお聴きの皆さん、こんばんは。2022年2月19日土曜日の 女優オノユリの映画の話をしましょうよ のお時間です。さて、番組の最終回まであと2回の放送となりました。自分がどんな気持ちで最終回を迎えるのかな?なんて想像すると、ドキドキいたします。というのも、今日の放送のように、しれっと収録を行っておりますが、その裏ではずーっと色々な感情がうずいていて、本当に声にこそ、その感情が漏れてこないように、一生懸命仮面をかぶせて、隠しているような気持ちなのです。それはね、この時期のわたしのあらゆる行動に紐付いていて、色々なところにヘンゼルとグレーテルの落とした小石やパンくずのように点々と残された、実は自分自身で気づかないうちにこぼしている、わたしオノユリのこの番組への想いだなぁと気付かされております。
では、本日も、映画の話をしましょうよ。本日お話する映画も、残り数回の中でどの映画にしようか本当に悩みました。メッセージ性だったり、話題性だったり…といろいろ考えすぎて決められなかったのですが、この作品に出会ったら、もう単純に、面白くて、全編通して心が震えっぱなしだったので、迷わず決定いたしました。
博士と狂人
Introduction
全米で大反響を呼んだベストセラーノンフィクション待望の映画化!史上最大にして最高の辞典を作った男たちの、驚きと感動の実話。
かつてこれほどまで「小説よりも奇なり」な真実があっただろうか―――。
初版発行まで70年以上の歳月を費やし、世界最高峰と称される「オックスフォード英語大辞典」通称OED。世界に冠たる(かんたる)辞典の礎を築いたのは、“異端の学者”と“殺人犯”だった。本作は、この驚くべき事実をドラマチックに描いたノンフィクション本待望の映画化だ。
貧しい家に生まれ学士号を持たない学者マレーと、エリートながら精神を病んだアメリカ人の元軍医マイナー。辞典づくりという壮大なロマンを共有し、異端の天才ふたりは固い絆で結ばれていく。だが、大英帝国の威信をかけた一大事業に犯罪者が協力していることが明るみになり、プロジェクトは暗礁に乗り上げてしまう。ついには、時の内務大臣ウィンストン・チャーチルや王室をも巻き込んでいくことになるのだが――。
今まで語られてこなかったあまりにも感動的な事実、歴史をも動かした強い信念は、困難な時代を生きる私たちの心をとらえて離さない。
構想から20年――。メル・ギブソンが全身全霊をかけた渾身作!
原作の映画化に真っ先に名乗りを上げたのが、マレー博士を演じるメル・ギブソン。監督作『パッション』や私生活ですっかりお騒がせイメージが定着するも、2016年の監督作『ハクソー・リッジ』はアカデミー賞®6部門にノミネートされ完全カムバック。『博士と狂人』の映画化には実に20年以上を費やし、情熱を傾けてきた。対する狂人マイナーには、アカデミー賞®主演男優賞を二度受賞している名優ショーン・ペン。南北戦争で心に深い闇を抱えながらも辞典づくりで救われるマイナーに憑依型アプローチで挑んでいる。
映画『博士と狂人』公式サイト
STORY
19世紀、独学で言語学博士となったマレーは、
オックスフォード大学で
英語辞典編纂(へんさん)計画の中心にいた。
シェイクスピアの時代まで遡り
すべての言葉を収録するという
無謀ともいえるプロジェクトが困難を極める中、
博士に大量の資料を送ってくる謎の協力者が現れる。
その協力者とは、
殺人を犯し精神病院に収監されていたアメリカ人、
マイナーだった――。
CAST
Jennifer Ehle・ジェニファー・イーリー : Mrs. Ada Murray エイダ・マレー
FILMANIA 映画の話をしましょうよ
いや、もう、素晴らしい映画で、面白くて、最高でした。
まず、ショーン・ペンの作品を観るたびに、恩師の言葉がよぎるのですが「役者として天才で素晴らしすぎるが故に、監督に敬遠(けいえん)される俳優」と恩師の塩屋俊先生が言っていたんですね。今回鑑賞して、そりゃそうだよな・・・と改めて想いました。演じる役への理解を、超えすぎて、監督を超越してしまうから、監督はなにも言えなくなるだろうと思うのです。
そして、メル・ギブソン。メル・ギブソンに関しても今までいろいろな話というか、ゴシップを耳にしてきました。なんとなく、リーサル・ウェポンシリーズでの彼がただただ何も考えずに好きでしたが、実際のメル・ギブソンの映画への愛は、今回始めて共演したショーン・ペンと同様にものすごく深くて、もはや理解しようとするのは難しいのでしょうね。93年の「顔のない天使」を少しだけ彷彿させるシーンが冒頭に有るように思いました。小さな頃に鑑賞した映画の断片を思い出したワンシーンに、自分があらゆる映画と、名優たちとともに人生を歩んでいるんだなぁとふと気付かされました。今作でのメル・ギブソンは、あの目力でメル・ギブソンと気づきますが、メル・ギブソンの特徴的なお顔の輪郭が立派なお髭で隠れているので、一瞬わからないのもあって、「顔のない天使」に通じたのかもしれません。『顔のない天使』もわたしのおぼろげな記憶を遡る限り相当な名作でしたので、機会があればぜひご鑑賞ください。(笑)殆ど覚えてないけど…
この主人公のお二人にあわせて、もうお一人…いや、お二人かな?の登場人物についてもお話させてください。今紹介しました Introduction も、Story も、Cast も、公式サイトからご紹介させていただいているのですが、その中でちょっとワタシ的には納得出来かねる一言があったので、あわせてお話したいと思います。
映画を鑑賞しはじめた冒頭から感じていたことなんですが、うわぁ…この学者マレー(メル・ギブソン)の奥様、すっごいなぁ…。ということ。鑑賞していただいたら、わかります。そして、公式サイトのキャスト欄でメインキャラクターが記載されているのですが、彼女の表記がなかったことにびっくりしました。なので、今キャストを紹介するときに、敢えて加えさせていただいたのが、『Jennifer Ehle・ジェニファー・イーリー : Mrs. Ada Murray エイダ・マレー』作品中の活躍は本当に素晴らしいです。確かに、劇中で登場回数が多いわけではありませんが、彼女の存在は常に作品の中にありました。
それから、NATALIE DORMER ナタリー・ドーマー演じる、Eliza Merrett イライザ・メレット。ゲーム・オブ・スローンズ に登場したときから、すごく印象に残るお顔の方だなぁと思っていました。ちょっとピーターパンを想起させる…と言うか、ディズニーアニメの登場人物のようなお顔の印象的な方です。この二人の存在、特にマレーの奥様、Mrs. エイダ・マレー が存在するからこそ、史上最大にして、最高の辞典が作り上げられたのです。そこで、公式サイトのIntroductionの表記にあった一文が引っかかるのです。
「全米で大反響を呼んだベストセラーノンフィクション待望の映画化!史上最大にして最高の辞典を作った男たちの、驚きと感動の実話。」この、「男たち」の部分。(笑)男たちだけじゃありません。その男たちを支えたり、ブチ切れたり、言葉の大切さを身に沁みてわからせたりしている、愛する家族や、愛すべき存在がいたからこそ、史上最大にして最高の辞典がうまれたのだと、この映画を鑑賞してわたしは知りました。なんだろう?こんな事を言うべきタイミングではないですが、言葉にしてみたいと思います。男性か女性しか登場しない物語があること、男性か女性のどちらかが活躍する物語であること、そこについて言及したいわけではありません。ただ、物語を鑑賞すれば一目瞭然に異性も存在し活躍しているのに、排除するのはやめて欲しい。言葉から受けるメッセージってすごく大きいのです。これから、未来であったり次世代のことを考えて、もっと言葉に責任をもって欲しい。せっかく、『言葉』のロマンを描く物語なのだから。
さて、物語は、メル・ギブソン演じる学者マレーが奇跡とも言えるような大抜擢をされ、英語辞典編纂(へんさん)計画の中心人物となります。もう、その時点で映像を見ながら鑑賞者にひしひしと伝わってきます。とてつもない言葉の迷宮に迷い込んでいることが。しかし、すぐに気付かされます。わたしが感じた「言葉の迷宮」はそんな言葉では甘っちょろいほど、とてつもない規模の底なしの大海原で、彼らは既に深海でさまよっているということに。いんや、恐ろしいことです。アルファベット『A』の項目だけで全然前に進めていないのです。観ているものにも既に地獄に感じます。途方もなさすぎて(笑)
そして、ショーン・ペン演じるウィリアム・チェスター・マイナー。彼は冒頭から殺人事件をおこしています。
ウィリアム・チェスター・マイナーとマレー、存在する場所に全く共通点がありません。同じ時代という点くらいかな?むしろ、ウィリアム・チェスター・マイナーの事件の記事をマレー教授の奥様、Mrs.エイダが読み、いたましい事件に思いを馳せるほど、二人の距離はとても遠いのです。そして、一体どうやってこの二人の距離が縮み、一緒に辞典を作るまでになるのか、全く想像がつかないのです。
その方法が、とても面白いんですよ!すごくチャレンジングで、本当にロマンを感じる。
実際、辞典が出来るまでにかかった時間てとてもとても長いので、映画で描かれているのは本当に一部分なのが伝わってくるので、きっと鑑賞しながら頭の中に「?」が浮かぶ方も多いと思います。わたしの頭の中でも「?」が浮かびました。なので、もしそう感じた時に気づいてもらいたいのは、映画の中で、すべてを語っているわけではなく、物語の骨や血や筋肉をわたしたちに見せているのです。すると、どのように肉がその骨を覆っているのか、鑑賞者にも想像出来るのです。
というわけで、本日お話したのは、P.B.シェムラン監督『博士と狂人』でした。いやもう、とてもとても面白い映画で、本当はもっとお話したい点がいっぱいあるのですが、ぜひ、作品を鑑賞してみなさんに物語を紐解いていただければ…ということで今日はこの辺でわたしのお話する物語は閉じようと思います。
それではまた来週、映画の話をしましょうね。
オノユリでした。