僕らの先にある道 Us And Them

僕らの先にある道

2018年 / 中国 / 119分

監督 レネ・リウ

Cast

Credited cast:
Boran Jing Boran Jing /ジン・ボーラン/井柏然 Jianqing / ジエンチン
Dongyu Zhou Dongyu Zhou /チョウ・ドンユイ/周冬雨 Xiaoxiao / シャオシャオ
Zhuangzhuang Tian Zhuangzhuang Tian

コエボンラジオをお聴きのみなさん、こんばんは。

先日、短編映画の撮影に参加してきました。

その映画のクルーがみなさん中国ご出身で、日本の映画が大好きで、日本映画の研究をされているとのことなので、一番お好きな監督を伺ったところ『小津安二郎 監督』と仰っていたんです。小津安二郎監督作品では、『東京物語』をこのラジオでご紹介したかもしれませんが、色々リサーチすると、なんだかとても難解なポイントがいくつも出て来て、わたしはとても混乱したことを思い出しました。そのことを告げると、

「小津安二郎監督作品は、みんな色々難しい説明をつけるけど、そんなことは考えずに、鑑賞すればいいんです。そんなものはないと思う。何も考えずに面白いと思えば、それでいい。僕自身、何もないと思ったし、単純に、面白いと思った。でも、それから映画を研究することによって、小津安二郎監督独特の映画の始まりかたや計算し尽くされた色々なことを知って、もっと面白いと思った。」

わたしは、目から鱗が落ちた思いがしました。今まで散々、映画はエンターテイメントせいがあるものが好き!わかりやすくていいじゃない!なんて豪語していたのに、すぐに長い物に巻かれるわたくし。自分を見失って、わたしが感じたことを押し退けて、何を意味したのか解説を重視してしまう。反省というよりも、まさしく目から鱗でした。とにかく、映画が好きで、研究している彼らの話が面白くて、もっともっと聴きたくなりましたし、日本人のわたしとは異なる背景を持ち日本映画を愛する彼らを理解したくなりました。撮影の合間に少しお話しする程度だったので、もっとゆっくりお聴きしたかったなぁ。

と言うわけで、すぐに影響を受けるわたくし。本日は中国の映画を選んでみました。この映画を鑑賞しながら、まさしく、一緒に作品に取り組んだ彼らの姿を思い出して、胸が熱くなりました。

僕らの先にある道(Netflix オリジナル映画)

2018年 / 中国 / 119分

監督 レネ・リウ

物語

都会で夢を追いかけていた頃、電車の中で出会った若い2人。その後、恋と別れを経験し別々の道を歩いていた彼らが、初めての出会いから10年後、偶然再会する。(Netflix https://www.netflix.com/title/80993655

この映画は、元々女優として活躍していた レネ・リウ監督 が執筆されたエッセイの映画化で、彼女の初監督作品です。中国では大ヒットした(女性監督による中国語映画として記録的な興行収入を収めた)劇場公開作品。

このレネ・リウ監督の『僕らの先にある道』は、不思議な作品で、とても短い作品のように感じたり、なんだか長い長い作品のように感じたりする対極の感覚を覚える作品でした。

2人の出会いは2007年中国の大晦日、北京から故郷へ戻る電車の中。ジン・ボーラン演じる、主演の1人ジエンチンは一緒にゲームで成功しよう!と同じ夢を見る仲間たちと、チョウ・ドンユイ演じるもう1人の主人公、ヒロインのシャオシャオは1人で、帰るところでした。地元が一緒なことを知り、意気投合して一緒に帰る4人。ヒロインのシャオシャオは、帰ったところで、待っている人がいるわけではなく、故郷で1人での年越しが待っていた。ジエンチンは、食堂を1人切り盛りする父が年末の恒例、きびまんじゅうを準備してくれていた。ふと、ジエンチンが外を見ると、シャオシャオが近所の子供と花火で遊んでいる。2人で話しているのを見たジエンチンの父は、シャオシャオも食堂に招き入れ、家族同然で一緒に過ごし、「毎年おいで」と声をかける。

夢を抱いて、都会へでる。夢を抱いて、大学を卒業して、生活の為にバイトをしたり、故郷へ帰ったり、就職をしたり。夢を抱き続けるのは、周りや自分と闘い続けることだったりもする。とても体力が必要で、見失うことも多い。そこに正解はなく、頑張ったからといって約束もない。・・・ついつい自分に置き換えて考えてみたりします。どの業界も同じですね。

垣間見れる、中国の大都会北京の様子は、とても妖しく、人同士が密接で、狭いところにぎゅっぎゅっと詰めこまれた、色とりどりの人生を感じました。

長い間家族と過ごしていないであろうヒロインシャオシャオは、自由奔放な性格に見えて、淡々と自分の憧れの生活を狙っていて、一見本当に手に入れたいものはなんなのか、鑑賞者には伝わりにくい気がしてしまいます。ただただ笑顔が可愛くて、人懐っこく、それも本人は承知の上できっとシャオシャオ自身が本当に欲しいもの、実は欲しいと信じているものと、内心手を伸ばしてしまいたい将来性の不透明な、けれどもどうしようもなく惹かれるものとの葛藤があるのだろうと思いました。女性は、リアリストが多いですから。ジエンチンとシャオシャオの幸せな時間は、本当に可愛い恋人たちの、2人ならなんでも大丈夫!2人なら乗り越えられる!かわいいかわいい姿は、既視感を覚えました。

いや、実際はずっとこの映画に並行してふわふわと漂う既視感があって、都度都度誰かのことや、長距離移動する為に乗った列車や、仲間とはしゃいで馬鹿をやった事や、永遠に一緒なわけではなかった大人になっていくわたしたちや、別れのとき。レネ・リウ監督の『僕らの先にある道』鑑賞中、横目で自分の姿もずーっと見えていた。

作品のエンドクレジットは物語の後半で胸がぎゅーっと苦しくなった後からずっと続いている胸の痛みと、涙で滲んだスクリーンに映し出される手書きの文字に、既視感というよりも今度ははっきりと自分自身を見つめている気がして、引き続きスクリーンは滲みました。

レネ・リウ監督の『僕らの先にある道』、過去はあっという間に過ぎ去り今はゆっくり流れる時を体感したように思います。中国の、ひとつの恋と家族の温かさを言葉にしてくれる物語。

 

そして最近恒例の、みなさまへのお願い事!

探している映画があります!もしDVDやBlu-rayをお持ちの方で、「貸してもいいよ!」と言うかたがいらっしゃいましたら、是非ご連絡くださいませ。お願いいたします。

映画タイトルは『JUST A GIGOLO』1978年製作/100分/西ドイツ、配給:テレキャスジャパン、デビッド・ヘミングス監督、出演はマレーネ・ディートリッヒとデビッド・ボウイ。情報があれば、コエボンラジオ「オノユリの映画の話をしましょうよ」を提供しております、一般社団法人日本タレント協会まで、メールでお知らせください。メールアドレスは、jca@jat.or.jp 、件名は「オノユリの映画の話をしましょうよ」で、よろしくお願いいたします。

ハッピーな連休を安全に思いっきり楽しくお過ごしくださいね!

また来週、映画の話をしましょうね、オノユリでした。

Phantom Thread ファントム・スレッド

2017年製作/130分/G/アメリカ
原題:Phantom Thread
配給:ビターズ・エンド、パルコ

監督:ポール・トーマス・アンダーソン

脚本:ポール・トーマス・アンダーソン

撮影:ポール・トーマス・アンダーソン

美術:マーク・ティルデスリー

衣装:マーク・ブリッジス

音楽:ジョニー・グリーンウッド

Cast

Cast overview, first billed only:
Vicky Krieps Vicky Krieps・ヴィッキー・クリープス Alma・アルマ
Daniel Day-Lewis Daniel Day-Lewis・ダニエル・デイ−ルイス Reynolds Woodcock・レイノルズ・ウッドコック
Lesley Manville Lesley Manville・レスリー・マンビル Cyril・シリル
Sue Clark Sue Clark・スー・クラーク Biddy・ビディ
Joan Brown Joan Brown・ジョーン・ブラウン Nana・ナナ

 

コエボンラジオをお聴きの皆さん、こんばんは。

女優 オノユリ の映画の話をしましょうよ、のお時間です。

段々と秋の気配を感じるようになってきましたね。「いつまでも暑い・・・」なんて声も聞こえてきますが、セミの鳴き声はもう聞こえてきません。風の中に、8月の間には感じられなかった、横に流れる糸のようなセンチメンタルさを感じる気がいたします。

数週間、この「オノユリの映画の話をしましょうよ」に力を注ぎ、(いえいえ、もう5年は力を注いでいますが・・・、ここ数週間新しい試みをわたしのコーナーにエッセンスとして加えてみていまして・・・)10分程度のコーナーに何時間も時間がかかっております。映画を選ぶ段階からふまえるともう数えるのやめたくなる程時間がかかっています。

わたしが picky なんですが、やはりご紹介するにあたってある程度、多角的と言うか・・・多機能的にお話しできるものがいいな・・・と言う漠然としたものが最近の「オノユリの映画の話をしましょうよ」のテーマでもあるのです。根本的には、みなさまにただただ楽しんでいただければいいな〜、と言う考えなんですよ!

さて、本日お話しするのは、

Phantom Thread ファントム・スレッド

2017年製作/130分/G/アメリカ
原題:Phantom Thread
配給:ビターズ・エンド、パルコ

監督:ポール・トーマス・アンダーソン

脚本:ポール・トーマス・アンダーソン

撮影:ポール・トーマス・アンダーソン

美術:マーク・ティルデスリー

衣装:マーク・ブリッジス

音楽:ジョニー・グリーンウッド

1950年代、ロンドン。英国ファッションの中心に君臨し、社交界から脚光を浴びる天才的な仕立て屋のレイノルズ。
ある日、レイノルズはウェイトレスのアルマと出会い、彼女を新たなミューズに迎え入れる。
彼はアルマの“完璧な身体”を愛し、彼女をモデルに昼夜問わず取り憑かれたようにドレスを作り続けた。
しかし、アルマの気持ちを無視して無神経な態度を繰り返すレイノルズに不満を募らせたアルマは…。
やがてふたりは、後戻りできない禁断の愛の扉を開き、誰もが想像し得ない境地へと向かう。
この愛のかたちは、歪んでいるのか?それとも純愛なのか   
華やかなオートクチュール(高級仕立服)の裏側で、映画史上もっとも甘美で狂おしい愛の心理戦がはじまる!(映画『ファントム・スレッド』オフィシャルサイト http://www.bitters.co.jp/phantomthread/about.html

Multifunctional FILMANIA

わたし、ロブ・マーシャル監督の『CICAGO』を鑑賞して、ロブ・マーシャル監督に嵌り、ロブ・マーシャル監督の『NINE』を鑑賞して、ダニエル・デイ−ルイスに心を奪われた人なんです。本当に素敵で素敵で・・・素敵ですよねぇ。
さて、今作ポール・トーマス・アンダーソン監督『Phantom Thread』はわたしの愛するダニエル・デイ−ルイスの引退前の最後の作品です。心が破れそう・・・わたしの初恋のショーン・コネリーと言い、ダニエル・デイ−ルイスと言い、なぜわたしの愛する男たちはこの世界に艶めく残り香を漂わせ、引退してしまうのでしょう。何故・・・。
ポール・トーマス・アンダーソン監督『Phantom Thread』、冒頭から思う存分雰囲気たっぷりです。冒頭のドキュメンタリー感は、生活音でしょうか。音の配置の隅々まで、完璧に1950年のレイノルズ・ウッドコックのオートクチュールを仕立てる ハウスに存在している空気を纏っています。
映像の美しさ、音や音楽の美しさ、そして・・・満を持して登場するドレスの美しさは、息を呑みました・・・あの感動は一度きり、初めてポール・トーマス・アンダーソン監督『Phantom Thread』を鑑賞した時にだけ鳥肌の湧き立つような感動を味わえます。2度目はね、わたしの場合は待ち構えちゃって、今か今か・・・ひゃーでたー!!ってもう既に味わっているものを求めようとしても、同じ感動は味わえないものだな・・・と改めて実感しました。3度目も試してみましたが、立て続けに鑑賞しても同じですね。
天才と言うのは、こう言う人。ダニエル・デイ−ルイス 演じる レイノルズ・ウッドコックはつくづくそうおもわされます。天才にもいろいろな解釈があると思いますが、彼は、そうなのです。そして、選ばれし天才、レイノルズ・ウッドコックは、その才能を余すところなくドレスに注ぎ込む為に、許されている物事が数多く存在します。
彼の生きる場所は、彼のルールで整えられているのです。
繊細な天才の心が疲れてしまったならば、彼の1番の理解者であるレスリー・マンビル演じるレイノルズの姉、シリルは、「今晩田舎の別荘へ行ってきたらどう?わたしも明日には向かうわ。」と促します。「あぁ、それはいい考えだ。とてもいい。」なんて言って、冷たい田舎の空気を肌で感じる為にむかいます。そして、出会う、田舎のウェイトレス、アルマ。レイノルズの心を捉えるシンデレラ。つい前の晩に女性を厄介払いする話を姉、シリルとしてた男、レイノルズ。レイノルズの甘いマスクと優しい声と、チャーミングな微笑みでデートに誘われるアルマ。
天才レイノルズの生きる場所は、彼のルールで整えられていたのです。
彼のゲームには、彼しか勝たない。
ポール・トーマス・アンダーソン監督『Phantom Thread』、ポール・トーマス・アンダーソン監督の仕掛けた罠。レイノルズしか勝たない恋愛ゲームに、彼女が勝利を納めた方法。
ポール・トーマス・アンダーソン監督『Phantom Thread』に仕掛けられた罠は、しっかりと鑑賞者を嵌める為に丁寧に、何重にも完璧に仕立てられています。ビディ役のスー・クラークとナナ役のジョーン・ブラウンは、実際に1950年代のクチュールの職人が演じています。ドレスを仕立てるシーンでビディとナナが映るともっともっと彼女たちをみたい、と引き込まれてしまう魅力があるのです。実際にドレスに使用された1600年代、フランドル地方のボビンレースを使用した衣装も登場し、レイノルズのセリフでもその説明があります。その繊細さ、鑑賞しているこちらまで緊張し呼吸が荒くなる瞬間でした。
わかりますか?伝わりますか?
既に、罠に呑み込まれているわたしと・・・このラジオを聴いているあなたに。
ポール・トーマス・アンダーソン監督『Phantom Thread』是非、さらなる深みに嵌ってください。

そして先週からお伝えしております、みなさまへのお願い事。先日のコエボンラジオ放送後、この番組、「オノユリの映画の話をしましょうよ」で紹介する映画のリクエストを募集したところ、いただいたメッセージより、わたくし、オノユリがご紹介したい映画と出会いました。ところが、幾ら探しても、全然見つかりません・・・。そこで、もしDVDやBlu-rayをお持ちの方で、「貸してもいいよ!」と言うかたがいらっしゃいましたら、是非ご連絡くださいませ。お願いいたします。

映画タイトルは『JUST A GIGOLO』1978年製作/100分/西ドイツ、配給:テレキャスジャパン、デビッド・ヘミングス監督、出演はマレーネ・ディートリッヒとデビッド・ボウイ。情報があれば、コエボンラジオ「オノユリの映画の話をしましょうよ」を提供しております、一般社団法人日本タレント協会まで、メールでお知らせください。メールアドレスは、jca@jat.or.jp 、件名は「オノユリの映画の話をしましょうよ」で、よろしくお願いいたします。

素敵な日曜日をお過ごしいただけますように。

また来週、映画の話をしましょうね、オノユリでした。

PAD MAN

2018年製作/137分/G/インド
原題:Padman
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント

監督 :R・バールキ

Cast

Credited cast:
Akshay Kumar Akshay Kumar・アクシャイ・クマール Lakshmikant Chauhan・ラクシュミ
Radhika Apte Radhika Apte・ラーディカー・アープテー Gayatri・ガヤトリ
Sonam Kapoor Sonam Kapoor・ソーナム・カプール Pari Walia・パリー

コエボンラジオをお聴きの皆さん、こんばんは。

オノユリの映画の話をしましょうよ のお時間です。

沖縄のみなさん、このラジオの収録は9月4日金曜日なのですが、台風の予報を聞いてとても心配をしております。どうか、みなさまご無事で、みなさまの生活に支障がありませんように。心から祈り、寄り添っております。みなさまが安心して朝を迎え、笑顔で過ごしていらっしゃいますように。

まず、本日の映画のお話に入る前に、みなさまにお願いがあります。先週のコエボンラジオの放送後、この番組、「オノユリの映画の話をしましょうよ」で紹介する映画のリクエストを募集したところ、いただいたメッセージより、わたくし、オノユリがご紹介したい映画と出会いました。ところが、幾ら探しても、全然見つかりません・・・。そこで、もしDVDやBlu-rayをお持ちの方がいらっしゃれば、是非お借りしたいのです!映画タイトルは『JUST A GIGOLO』1978年製作/100分/西ドイツ、配給:テレキャスジャパン、デビッド・ヘミングス監督、出演はマレーネ・ディートリッヒとデビッド・ボウイ。情報があれば、コエボンラジオ「オノユリの映画の話をしましょうよ」を提供しております、一般社団法人日本タレント協会まで、メールでお知らせください。メールアドレスは、jca@jat.or.jp 、件名は「オノユリの映画の話をしましょうよ」で、よろしくお願いいたします。

では、本日の映画のお話をはじめましょう。

PAD MAN 5億人の女性を救った男

2018年製作/137分/G/インド
原題:Padman、配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント、監督 :R・バールキ

先日サッサ・ブーレグレーン作の「北欧に学ぶ小さなフェミニストの本」を読み、自分の価値観が凝り固まっていることを驚きとともに知りました。

G8 ジェノバ・サミットの写真を見ても、何も感じなかったのです。その写真に写っていたのは、世界の権力者8名。日本の小泉純一郎首相、英国のトニー・ブレア首相、アメリカのジョージ・W・ブッシュ大統領、フランスのジャック・シラク大統領、イタリアのシルヴィオ・べルル・スコーニ首相、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、カナダのジャン・クレティエン首相、ドイツのゲアハルト・シュレーダー首相ら、2001年当時のG8の首脳です。この写真は、全員スーツで、アジア人はたった1人(小泉首相)で、あとは白人。そして、全員が男性です。わたしは、その事にすら何も気付かない、感じなかったのです。本の主人公である10歳の女の子が指摘するまで、違和感のない自分に驚愕しました。全ては、子供の頃から<当たり前>で、考えることすら不要なものが、わたしの中にはあるのです。

R・バールキ監督「PAD MAN」は、実話を基にしたお話です。

STORY

インドの小さな村で新婚生活を送る主人公の男ラクシュミは、貧しくて生理用ナプキンが買えずに不衛生な布で処置をしている最愛の妻を救うため、清潔で安価なナプキンを手作りすることを思いつく。研究とリサーチに日々明け暮れるラクシュミの行動は、村の人々から奇異な目で見られ、数々の誤解や困難に直面し、ついには村を離れるまでの事態に…。それでも諦めることのなかったラクシュミは、彼の熱意に賛同した女性パリーとの出会いと協力もあり、ついに低コストでナプキンを大量生産できる機械を発明する。農村の女性たちにナプキンだけでなく、製造機を使ってナプキンを作る仕事の機会をも与えようと奮闘する最中、彼の運命を大きく変える出来事が訪れる――。(パッドマン:https://bd-dvd.sonypictures.jp/padman/)

物語は、主人公の男性ラクシュミの結婚式、でろでろに甘ーい新婚生活から始まります。手先が器用で作業場で働く誠実な主人公は愛する新妻が料理をしながら涙を流している事に気づき、道ばたで売っているおもちゃを改造して玉ねぎちょっぷちょっぷマシーンを作り、街行く女性が髪にさしている花に気付き、同じ花ではなく誰も身に付けていない美しい花を彼女のために探して摘み、贈ります。自分が自転車を漕ぐ度に膝が彼女にあたってしまう事に気付き、彼女も座れるように自転車を改造します。ラクシュミは、愛する妻の為になんでもしてあげたいのです。もう、ロマンティックが溢れるシーンの連続なのです。なんて幸せな新婚夫婦でしょう!

そして、鑑賞しているわたしに衝撃が走ります。映画の設定は2001年、日本では平成13年、かわいい新妻ガヤトリが家族とお祝いごとの最中に突然外に出て、その後5日間家の中に入れないと言うのです。絶句でしょ?え・・・実話?外で寝るの?外出も出来ずに隔離・・・嘘でしょ?

その時に初めてラクシュミは生理の実態を知るのです。家族女性だらけなのに、愛する人と暮らしはじめて、初めて違和感に気付くのですね。

インドの公的な数字では、ナプキンの使用率が10%程度。様々な場所で、この数字を見せると、よく怒られる。インドは高層ビルも建ち、ロケットも打ち上げられている。そんな力のある国で、なぜこんな状況なんだと。7人のうち1人以下しかナプキンが使えない

ナプキンの代わりに、洗濯物の下で隠して干した生乾きのぼろ布で月経の出血をしのぐ。(HUFFPOST「インドの「パッドマン」が映画化。生理のタブーに苦しむ妻を救うため、社会を変えた男性に話を聞いた」: https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/05/india-padman_a_23610008/

こういった、日本とはまるっきり異なる習慣や考え方を映画で見知るのは本当に映画の良い点ですよね。ここから、ラクシュミの愛の力と、発明意欲が爆発します。ここからの道のりの長い事・・・。インドの首都、デリーのような都会ならまだしも、小さな村なのでとても保守的な村人たちに一切理解されず、結婚してから頭がおかしくなってしまった、なんて言われてしまいます。ここらへんで、言葉の力、と言うべきか、翻訳の力にも驚かされました。「女の股の間になぜそんなに興味があるの?」泣きながら旦那様を説得する奥様、ガヤトリ。言葉の威力の強さ・・・凄くないですか?

凄くロマンティックで、愛に溢れている行動が、どんどん奇行と思われて追い詰められて行く様は、日本人のわたしからすると、口惜しくてもどかしくてたまりませんでした。

特に、R・バールキ監督映画「PAD MAN」の中で描かれているインドの生理に対する実態は本当に不衛生で、若い女性が命を落とすほど危険なのです。生理用品のナプキンは、衛生用品のため、怪我をした時救急用としても使えます。切り傷一つでも、細菌だらけの布などをあてて手当てすれば、破傷風菌が身体の中に入り、感染症にかかることと同じことです。<穢れ>としてタブーとして扱われ、必要な知識を与えられず、<当たり前>として生活を続けること。この<当たり前>の壁を取り払う事の難しさは、つい最近自分のガチガチに凝り固まった価値観に気付いたわたしには、痛いほど良く伝わりました。

ラクシュミは、自分自身が生理を体験すべく、自分で作った生理用品と動物の血液を使用し、ポンプを使って日常で血液が出る生活を送ってみます。そして、映画のモデルとなったムルガナンダル氏は言います。

その時に、秘密を一つ知りました。神様がつくった地上で一番強い強い存在は、象でも虎でもなく、女性なんだと。だからこそ、僕は女性たちの役に立つために絶対にギブアップしてはいけないと、気持ちを持ち続けることができた」(HUFFPOST「インドの「パッドマン」が映画化。生理のタブーに苦しむ妻を救うため、社会を変えた男性に話を聞いた」: https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/05/india-padman_a_23610008/

そして、ラクシュミの考え方は、インドの性差別をなくす方向へと進んでいきます。

もう、ここからはノンストップ最高のサクセスストーリーとなっていきます。インドだけに限らず、世界へ彼の発明品は飛び立っていき、小さな保守的な村で劣悪であった性差別や、立場の弱い女性の生活を変えていきます。

R・バールキ監督映画「PAD MAN」の主人公、ラクシュミは大学卒でも金持ちでもなく、ただ妻をとことん愛する、愛する妻の事だけを考え、5億人の女性を救い、モデルとなったムルガナンダル氏は2014年に米(アメリカ)タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれたほか、2016年にはインド政府から褒章(ほうしょう)パドマシュリも授与されました。

このR・バールキ監督映画「PAD MAN」のフェミニズムの精神には、心底心を打たれました。世界に存在する不公平を打ち破る力。人を愛する力。実は、問題というのは本当に身近にあって、<当たり前の価値観>の中に溢れているのです。

インドで初登場No.1のヒット作、R・バールキ監督映画「PAD MAN」、出来る限り多くの人に届いて欲しい映画です。

差別は、<当たり前の価値観>の中に存在することがあります。ぜひ、身近に感じてみてください。

 

最後に、もう一度ご案内させてください。みなさまへのお願いがあります。先週のコエボンラジオの放送後、この番組、「オノユリの映画の話をしましょうよ」で紹介する映画のリクエストを募集したところ、いただいたメッセージより、わたくし、オノユリがご紹介したい映画と出会いました。ところが、幾ら探しても、全然見つかりません・・・。そこで、もしDVDやBlu-rayをお持ちの方がいらっしゃれば、是非お借りしたいのです!映画タイトルは『JUST A GIGOLO』1978年製作/100分/西ドイツ、配給:テレキャスジャパン、デビッド・ヘミングス監督、出演はマレーネ・ディートリッヒとデビッド・ボウイ。情報があれば、コエボンラジオ「オノユリの映画の話をしましょうよ」を提供しております、一般社団法人日本タレント協会まで、メールでお知らせください。メールアドレスは、jca@jat.or.jp 、件名は「オノユリの映画の話をしましょうよ」で、よろしくお願いいたします。

みなさまの明日が、輝いていますように。

また来週、映画の話をしましょうね、オノユリでした。